ノラネコだって、夢くらいみる

 私、このままこの男に襲われてしまうのかな。

 こんなことならもっとはやく、素直になっていれば良かった。

 せめてあの人に、気持ちを伝えればよかった。

 ううん、伝えたところで意味なんてないか。

 もう、どうでもいいや___

 噂がたっても売名目的だと思われて済むならそれでいいや。

 私はこれまで通仕事に打ち込めばいい。

 そう思うと、全身から力が抜けていく。

「お利口だね」

 そう言うと、佐伯さんが私にキスしてきた。

 1度では終わらない。角度を変えて、何度も何度も。

「………っ」

「ごめん。苦しかった?」

「………」

「そんな顔しないで。俺、キミが手に入るなら他の子はいらないから。何でもしてあげるよ」

 ………欲しくない。あなたから、何も。
 
「可愛いよ、RIN」

 嬉しくない。

「好きだよ」

「佐伯さん」

「理久でいいよ」

「……教えてください」

「え?」

「好きって気持ちは、押し付けるものなの?」

「!」

「自分だけよければいいの?」

「………」

「あなたのこと、尊敬してた。演技に入ると別人みたいになるし、周囲への気遣いだって本当にできるのに。こんなこと平気でできる人間だったなら、軽蔑する」

「RIN………」 
 


「鈴!!」


 ……………!?