ノラネコだって、夢くらいみる

「バカなんですか?あなた、売り出し中でしょ?」

「RIN相手なら、事務所の力でなんとでもなるさ。映画の宣伝のための捏造(ねつぞう)に見せかけてくれるかも」

「なにそれっ……どいて下さい」

「君のその、周りに染まらないところ。簡単になびかなさそうなところ。デビューした頃からずっと、いいなって思ってた」

「え………」

「RINの載っている雑誌は片っ端から買ったよ。写真集は、保存用に観賞用、それから布教用に大量に取り寄せたよ」

「ふきょ……!?」

「一緒に仕事ができることが決まった時、震えた」

 やばいこの人。こっちが嫌がっていることなんて、まるで気にしていない。

「いいから離れろ、変態!」

「嬉しいなぁ。もっと、怒って?」

 真性の変態か!?

 佐伯さんの腕を振り払おうとしても、びくともしない。

 小柄な私が長身で細マッチョなこの男にかなうわけがない。

「あの社長にとっくに食われてると思った」

「は?」

「知らない?キミのとこの男前な社長、仕事のためなら手段を選ばないって話」

「………ほんとに?」

「そういう噂だよ。営業先だろうがタレントだろうが、仕事が円滑に進むためなら男女関係にすらなるって」

「………!」