ノラネコだって、夢くらいみる

「初めて、なんてことはないよね?」

 上着を脱ぎながらそう訪ねる、佐伯さん。

 いや、こんな高そうな部屋に来るの、初めてに決まっているでしょう。17の子供が二度も三度も訪れるわけがない。

 そこに置いてある花瓶だっていくらするか未知だし、迂闊に触れないし近づくのが怖い。

「初めてです」

「嘘だろ……?」

 え?私、おかしなこと言った?

 どうして佐伯さん、そんな驚いた表情してるんだろう。

 佐伯さんは、こっちに近づいてくると、勢い良く私をベッドに押し倒した。

「嬉しいな。キミの初めてが俺なんて」

 ………!?

「さ、佐伯さん!料理は?」

「お腹すいてるの?部屋まで運んでもらおうか?」

「違っ……2次会ですよね?ご飯食べに来たんですよね?」

「ここまで来ておいて、それはないよ」

 ………私、なんてバカなんだろう。

 どうしてこの人ならついてきても平気かなって思ったんだろう。

「爽やかイケメンで売ってる割に、意外と肉食系男子なんですね。捕まりますよ、17歳に手を出しちゃ」

「俺とこんなシチュエーションになってそんなこと言った子、君が初めて」

 ってことは、こうやって流れでこんなところに誘い込んで誰かを押し倒すの、初めてじゃないんだ?

「スキャンダルとか怖くないんですか?」

「んー……考えたことない」