ノラネコだって、夢くらいみる

 クランクアップ、つまり私の撮影シーンが終わった日、メインキャストの佐伯さんら数名と、食事をすることになった。

 その席で佐伯さんと初めて長時間語り合った。なんと佐伯さん、爽やかなイメージとは裏腹に案外オタクで、趣味の話が私とマッチしたのだ。

 女優の芦原智美(あしはらさとみ)さん、とても美人な方なんだけど、その人は私の隣で首をかしげ、何の話?と言いながらも、始終ニコニコしていた。

「そうだ。私の妹がね、RINちゃんのファンなの」

 と、芦原さん。

「妹さんが……?光栄です!」

「サインもらえるかな?妹の名前、七海っていうの。七つの海って書いて」

「可愛らしいお名前ですね」

「写真も撮ってもらっちゃおうっと」

 芦原さんが、スマホを取り出す。

「いくよ?笑ってー…はい、チーズ」

 パシャ

「ありがとうね、RINちゃん。会うまでは、なんだか不思議な子ってイメージあったけど、こうして笑ってくれると普通の17歳だよね」

 芦原さんが満足気にスマホを確認したあと、ポケットにしまった。

 ……普通の17歳、か。

 私は台本に七海さん宛にサインをして、芦原さんへと渡した。

「七海さん、喜んでくれたら嬉しいです」

「ありがとう。絶対喜ぶわ。りんりんって呼んでるんだよ」