ノラネコだって、夢くらいみる

 正直なところ、芸能人というものはテレビ画面越しにみるその人のイメージと実際に会うその人がかけ離れていることが少なくない。

 いちるのように、プライベートと仕事でのキャラをわけているのは悪いことだとは思わないけれど。

 例えば、とある番組の収録中ニコニコしていた人が、カメラがまわっていない時は不平不満を言う。

 現場が暑いだの寒いだの、そんなことで。

 誰もがそんなことは思っているだろうに、自分だけが大変なわけでもないのに。

 いくらカッコよくても、いくら美人でも、ちやほやされて付け上がってる人を見る度に、ああはなりたくないなと思うのだった。

 その点、佐伯さんは、ある意味イメージ通りだった。

 スタッフに対しても気遣いのできる人だったし、他の人みたいに他人の悪口を言ったり、私に対して嫌がらせをしてくることもなかった。

 というのも、挨拶をして無視をされたり、すれ違い際にイヤミを言ってくるといった、社会人らしからぬ人がいたから。

 中学時代モモから受けた仕打ちに比べれば、どれも屁でもなかった。

 あの時の出来事は自分至上最悪の出来事だったと今でも思うが、皮肉にも、そのお陰で私は有名にもなったし、強くもなっていた。