ノラネコだって、夢くらいみる



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___17の冬が訪れた。


 今私は、映画に初メインキャストでの出演が決まり、再来年公開の映画に向けて、撮影に励んでいる。

 演技の指導は厳しく、なかなかOKをもらえないこともあったけれど、私に役が与えられ、自分以外の誰かになれるってことは、楽しくもあった。

「お疲れ」

 撮影現場で休憩中、誰かが声をかけてくる。

「お疲れさまです」

 今最も注目されるイケメン若手俳優の1人であり、この映画主演をつとめる、佐伯理久(さえきりく)さん。

 好青年というイメージで売っている人で、どことなく、幼なじみの大地に似ている。

「寒くない?」

 11月下旬。場所は、とある沿岸。春のシーンを撮っているので、着ているのは春物だ。その上に、待機中のみコートを羽織っている。

 寒くないと言えば嘘になる。吹く潮風は冷たく、現場を少し離れれば、マフラーをつけて歩いている人だって多くいる。

 だけど目の前にいる佐伯さんは、私なんかよりずっと撮影時間が長い。

「平気です」

「嘘。震えてる」

「………ちょっとだけ寒いです」

「はは。強がりだな、キミ」

 笑い方まで、大地に似ている。

 遠くから、監督が佐伯さんを呼ぶ声が聞こえてくる。

「じゃあね、りんりん。いい作品になるよう、頑張ろっ」

「……!はいっ!」 

 この日を境に、ちょこちょこ佐伯さんと話をするようになった。