ノラネコだって、夢くらいみる

 だけど、逢阪の私を見つめる瞳は言葉とは裏腹に、勘違いしてしまいそうなくらい優しくって………

「出逢ってまだ半年しかたってないのに、妙に色気付いたな」

「そんなことっ……」

 逢阪の顔がどんどん近づいてくる。これって………

 いちるとのキスを思い出す。あれは不意打ちだった。だから、避ける余裕もなく。ただ柔らかいものが唇にあたったという感覚が少しの間あっただけ。

 今まさに、逢阪は、私に……キスしようとしていて。それに気がついていながら、じっとしている私って……私って……

 もう何がなんだかわからなくなり、唇と唇が、触れそうで触れない距離まで近づいた気がしたところで、目を閉じる。息も止める。

 …………?

 逢阪の気配が遠のいていく気がして、目を開ける。キスは、されていない。

「安心しろ。お前に欲情するほど飢えてねーよ」

 逢阪は立ち上がるとキッチンへ行く。グラスに水道水をそそぐと、それを飲んだ。

「悪かったわね、ガキで」

 セクハラしておいて、さらっと侮辱するな。どうせ幼児体型ですよ。

「考えてもみろ。一回り以上離れてるお前をそういう目で見れるわけがないだろ」

 やっぱり本気で襲う気なんて更々なかったんだ。

「でもいちるは違うぞ」

 え?