ノラネコだって、夢くらいみる

 そうだ。せっかくだから、このカラフルなお菓子を写真におさめておこう。

___パシャッ

「写真なんて撮ってどうすんの?」

「どうって……可愛いから記念に」

「ふーん。好きだよな、女ってそういうの」

「上手く撮れないなぁ」

 可愛く、美味しそうに撮るにはどの角度から撮ればいいだろう。明るさも重要になってくる。撮影されたドーナツがいかに輝くかは、私の腕にかかっている。

「カメラマンさんって大変だね」

「パス」

「え?」

 食べかけのドーナツを渡される。ニコちゃんの顔が半分になってしまっているもの……。持っておけってこと?

「もう無理。お前それ食え」

 は……?

「甘すぎ」

 な、なんで私が逢阪の食べかのドーナツ食べなきゃならないのよっ……!

 ……………と思いつつ、ドーナツに罪はないので、食べる。美味しい。でも逢阪の言う通り激甘。こんなにたくさん食べきれる気がしない。

 いちるが起きたらあげて、持って帰っておじいちゃんとおばあちゃんにもあげて、お母さんにもお供えして……それでも多い。

 大地の家に持っていってあげようか?

 大地とは連絡を取れていないし、会ってもいない。元気にやっているだろうか。

「はい、チーズ」

 え?

___カシャッ

 突然の呼びかけとシャッター音。

「なに撮ってるの?」

「鈴」

 見ると、こっちにカメラのレンズを向ける逢阪。

 カシャカシャッ、と連射される、

「ちょっと……!」

 不意打ちをくらった。ドーナツを頬張る私を撮られた。

「おさめておきたくて」

「?」

「記念に」

「なんの記念よっ」

「可愛いから」