ノラネコだって、夢くらいみる

 手みやげのドーナツは、普段口にする駅前やショッピングモールに入っているようなチェーン店のそれとは違っていて、ものすごくカラフルで派手なものだった。

 黄色いベースに茶色いチョコで顔の描いてあるものだったり、原色の緑や赤など色の濃いクリームがのっていたり、ピンクでハートの形をしていたり。

 アメリカ人が好みそう、なんて言ったら偏見かもしれないけれど。日本ではあまり原色の食べ物って見かけない、和菓子も淡い色だったりするし、ドーナツにかけるきな粉や黒糖、抹茶なんかは、ここまでカラフルにはならない。

 そういえば、原宿では桃色や水色に色付けされたバカでかい〝わたがし〟が流行っているそうだ。
 
 それからこれはフォロワーさんに写真を見せてもらったのだけれど、中野の老舗では8段重ねのカラフルなソフトクリームが食べれるらしい。

 ただし、どれもパステルカラーだったりする。だから、こんな原色のお菓子って珍しい。ドーナツなのに、まるでゼリービーンズのよう。

「これ、可愛い」

 サンタ、トナカイをモチーフとしたものがある。そうか、もうすぐクリスマスなんだ。

「でも、3人で食べきれる量じゃないよね」

「全部お前のだ」

 え?

「………あまっ」

 逢阪がドーナツを1つ箱から手にとって、一口食べ、そう漏らした。

「全部私のって言ったそばから、食べてるし」

「お前のものは、俺のもの」

 ジャイアンか。