ノラネコだって、夢くらいみる

「………それ、もう反則だから」

「反則?」

「だからー」

 ………!!

 顔をむぎゅっと摘まれる。おかげで私の顔は、タコみたいに変形したに違いない。

「あんまり可愛いこと言って、可愛い顔すると、襲うよー?」

「………!?」

 タコ顔が可愛い?そんなバカな。

「僕は鈴の嫌がることしないって決めたけど。いつか、止められなくなりそうで怖いよ」

 …………!!


___ガチャッ……バタン



 背後からリビングのドアが開け閉めされる音がして、いちるが私から手を離した。

「玄関開いてたぞ。不用心だな」

 逢阪が来た。

「ちょっと休んでくる。鈴は、社長と遊んでて」

 そう言うと、いちるは寝室に入って行ってしまった。

 いやいやいや。遊べって言われても、困る……!

「お疲れさま。また寝に来たの?」

「ああ」

「………相変わらずいいように利用してるよね、いちるの家を」

「お前のお守りを頼まれちまったがな」

「べ、別に相手してもらわなくっていいです!帰りますから」

「ほれ」

「………?」

「ドーナツ。食うか?」

「…………食べる」