ノラネコだって、夢くらいみる

 いちるの部屋から出てリビングにいくと、誰もいなかった。そして、ゲストルームの扉が少し開いていた。

 そこから話し声が聞こえてくる。電話中かな?

「お前の書き込みに便乗して、いい具合にファンが擁護してる。あとは、いちるが上手くまとめてくれるだろう」

 ……?

 他人の会話を盗み聞きするなんて悪趣味だと思いつつ、気になってしまう。

「引き続き、裏をとってくれ」

 刑事みたいな台詞である。

「ああ。わかってる。相当ダメージ受けてるくせに、自分の心配する前に、仕事のこと考えてやがる」

 え?

「甘えさせてやりたいって、もっと褒めてやりたいって思っても、どうしても厳しくしてしまうんだ。俺、子飼いの才能ねーのかな」

 ………!

「また連絡する。それじゃ」

 声がこっちに近づいてくる。部屋から出てくるんだ!

 は、離れなきゃ!

___って、ダメだ。間に合わない。

 中から逢阪が出てきた。

「何やってんだ?」

 真っ暗な部屋はエアコンがききすぎていて、冷気が一気にこちらに漏れてくる。

「風邪ひくよ……こんなにガンガン冷やして眠っていたら」

「ちょうどいい。水もってきてくれ」

「は…?」

 そう言って、逢阪は部屋の中へと戻って行ってしまった。

 ………私は召使いかなにかですか?