ノラネコだって、夢くらいみる

「これは、僕が偶然鈴と鈴の友人に鉢合わせした日、第三者が僕らを撮影したものです」

 いちる以外の顔、つまりモモと私の顔はハッキリとは写っていない。

「わかりにくいですが、鈴と僕の服装が、出回っている鈴と僕の写真とまるきり同じです。もっと言えば、僕の服は、衣装です。その日あった撮影のために用意されたってことは、雑誌を見れば一目瞭然です。スタイリストの私物なんかもありますし」

 そういえば、前にいちる言っていたっけ。あの日、ファンの子から隠し撮りされていたって。

「撮影の合間にぶらついていて遭遇した鈴のことを、僕はその日のうちにTwitterで、こう呟いています。【夢の国で黒猫と遭遇】と。まずはそれらを使って、これはプライベートなデートでなく、たまたま鈴と鈴の友達が僕の撮影現場に居合わせたということを証明するようなツイートをしようと思います」

 いちるは、淡々と続けた。いつもの雰囲気と全然ちがう、いちる。

「この時にはRINは既に僕の事務所の後輩で顔見知りだった、だから声をかけた。その時RINは友達といて、その友達が側を離れたタイミングで撮られたにすぎないと。こんな形で後輩のプライベートが晒され、中傷されているのは、心苦しいと」

「なるほどな」

「………待って、いちる」

 私は、いちるのTwitterに寄せられる1件のコメントに注目した。

「どうしたの?鈴」

「もう、出てる!その、写真!えっと…2分前に」

「え?」

 いちるが自分のTwitterページを確認する。