熱いのに運動をする意味も、休みの日にまで学校に出向いて練習する意味もわからない。

 ……と、思っていた。

 今なら、わかる。もちろん今から部活に入る気はないけれど、好きなことややりたいことには、いくらでも時間や労力を費やしたいと思う気持ちなら、理解ができる。

 まさか私が、こんな風に考えるようになる日がくるなんてね。

 誰かさんと出逢ったせいで、物の見方が変わった。感じ方が変わった。

 大切な人が側にいることに気づけた。世の中捨てたもんじゃないと思わせてくれた。

 わくわくする世界に連れ出してくれた。

 この広い世界にたった一人だけ居場所のないような気がしていた、ノラ猫のような私を、さらりと拾ってしまったあの人のせい。

 ………全部、逢阪のおかげ。

「あ、あの子じゃない?」

「黒川鈴って」

「マジなのかな、これ」

 ………?今、呼ばれた?

 気のせいだろうか。全然知らない1年や3年まで私のことを見ているような……

「行こ、鈴ちゃん。なんか怖い」

「うん」

 モモと別れ教室に入ると、黒板の前にも人だかりができていた。

 そしてまた、その前にいる人たちは私を見てきて……

「黒川鈴、きたよ」

「ほんとだ」



___嫌な予感がした。