ノラネコだって、夢くらいみる

「明日にはちゃんとして来いよ、黒川」

___うるさいハゲ

 浅倉の背中を見ながら、心の中でそう呟いた。



 私は、今日も退屈な日常を送っていた。

 一週間前私に声をかけてきたあの男とは、あれ以来原宿で遭遇していない。

 もう会うこともないのかもしれない。

 連絡は、していない。

 多分あの逢阪とかいう男も私のことなんて忘れてしまっただろう。

 なら、それでいい。
 

 
「よぉ、鈴。またアサセンから説教くらってたのか?」


 日下 大地(くさか だいち)

 この学校で唯一、私に好き好んで話しかけてくる存在。


「一緒に帰らない?」

「……大地、部活は?」

「休み」


 大地はバスケ部に所属している。

 成績優秀、スポーツ万能な爽やか系イケメン。


「ちょっと……なんで日下くんが、あんなのと喋ってるの?」

「幼なじみらしいよ」


 おい、そこの女子。誰だか知らないけど、聞こえてますが。


「どうした?鈴」


 私が、私のことを〝あんなの〟とか言った女子を睨んでいると、首を傾けて不思議そうにしている大地。

 大地には聞こえなかった模様。


「別に」