【短】ねぇ、こっち向いて。






「なんで、追いかけてきたりしたの……?」




さっきよりもか細い永井さんの声が、小さく響く。


永井さんは、幼い子が泣くのを我慢するみたいな顔をして瞳を潤ませていた。




「永井さん……?」


「追いかけてこないでよっ!」




何も答えられずにいる俺に、永井さんは声を張り上げてそう言ってきた。


耳まで赤くなった永井さんを、俺は不覚にも可愛いと思ってしまった。



……どうして、そんな表情をするのかわからないけど。


もう切なげなその顔はしないでくれ。



君は笑顔の方が似合うから。




「せっかく悪い子を卒業したのに……っ」


「え?」