【短】ねぇ、こっち向いて。





ついため息をこぼしてしまうほど、胸の奥がざわついて仕方ない。


何なんだ、この気持ちは……。



どうして、こんなにも永井さんのことが頭から離れないんだ。





――カタンッ。





それは、小さな音だった。


けれど、静かな図書室ではその音さえも大きく感じてしまう。


反射的に目を向ければ、そこには扉越しに図書室を覗いていた永井さんがいた。




「っ!」




目が合って、永井さんは驚いた様子でその場から逃げ出した。


なんで逃げるんだ……!?




「永井さん!」




無意識に俺は、逃げる永井さんを追っていた。


追う理由なんてないのに、無我夢中で永井さんの小さな背中に手を伸ばしていた。