とうとう待ち焦がれた時間を迎えた。

2年前の姉達と今、同じ場所にいる。

それだけで、大人になったように思う。

母はいつものように優しく微笑んで、父は相変わらず無愛想だけど、私をまっすぐ見つめてくれている。

姉達は私を抱きしめ、

「楽しんできなさい。

お話聞かせてね?」

「もちろんよ。カレンおねーちゃん。」

「…リン、約束。朝までには帰ってきなさい。」

「ええ。マリアおねーちゃん、分かってる。」

ぎゅっと抱き返して、静かに離れる。

その時2人の同じ、ライトグリーンの瞳に私が映った。

少し、その瞳が潤んで見えたのは、高揚感がもたらした錯覚だと、そう思っていた。

懐かしいこの道。

あの時の、ため息で追いかけた道。

今度は、期待の深呼吸を送って。

「行ってきます!」

ヒレを降った瞬間、ひとつ、大きな泡ができた。

それも見る見るうちに、小さく割れ、上へとのぼっていく。

それに負けないように、私も、上を見据えて泳ぐ。

薄暗い水の中。

大丈夫。

この上には、美しい星ぼしが輝いているはず。

水の薄さが増していく。

もうすぐ、世界が変わる。

水面から顔を出すと、髪が後ろに流れ、肌に冷たい風を感じる。

頬についた髪を耳にかけながら、上を見上げた。

そこには、待ち望んだ星はなく、ただ、黒い闇が広がるばかり。

どこを見渡しても、星なんてない。

体を動かすたび、湿った水の音が煩く耳に響く。

…星が見えるのは、この場所じゃないのかも。

ふと、そんなことを思い、どこまでも広がる黒い海を進んだ。

近くに陸はあるが、この足では陸に上がれない。

光も何もないし、そもそも、人間とは交わってはいけないルールだし。

こういう時、どうすればいいんだっけ。

誰かいてくれれば、心強いのに。

あぁ、駄目だ。

また姉たちに嫉妬してしまう。