「では、早めに行きましょうか。
これ以上冷えてしまっては寝不足のお体に影響致します」
「わかったわ」
夕方だというのに、真冬のようにノール村は寒い。
ソレイユ王国最北端の村とは聞いていたけど、正直ここまで寒いのは初めて。
わたしは車内で着込んだ上着のチャックを上に上げた。
「……ご覧くださいお嬢様」
ドクが右斜めを見上げる。
その視線の先には枯れた大木が立っていた。
「これ、おそらく桜でございます」
「桜!?」
春は過ぎ、あたたかな日々が訪れている季節。
それでも中心街ではまだ咲いている桜もある。
それなのにこの木の桜は、もう跡形もなく散ってしまっている。
「それほどここは寒いのですね。
先を急ぎましょう」
「ええ」



