「……何これ…」
わたしは調査書を握った手を震わせた。
紙がグシャリと歪む。
「……ドク、車を用意して」
「お嬢様?」
「わたしを、ノール村に連れて行って」
「エル!」
お父様がわたしを怒鳴る。
「駄目だ行くなんて!
警察に電話をし保護してもらう。
エルが出る必要はないだろう」
「お父様の目は節穴かしら」
わたしは書類を持ち上げた。
「もしかしたらシエルは家で酷い目に合っていたかもしれないのよ。
それなのに誰も動かなかった。
警察に頼っている暇なんてないわ」
「エル!!」
「施設に保護させるより、わたしが保護した方がよっぽど安全だわ。
セキュリティーもこの家はしっかりしているし、シエルを傷つけるのはわたしが許さない。
シエルはわたしにとって大事なお友達なのだから」
わたしは無言のお父様とお母様を見て、ドクを見上げた。
「ドク、車を用意してちょうだい。
早くノール村に行くわよ」
「…後悔致しませんか、お嬢様。
一筋縄ではいかないかもしれないですよ」
「後悔をしているのなら、わたしは言わない。
何があっても、わたしはやってみせる」
「……承知致しました、お嬢様。
車を準備して来ますので、お嬢様は上着をご用意ください。
ノール村は夏でも一桁まで下がるほど寒い地域ですから」
「わかったわ」
わたしはドクと別れ、上着を取りに部屋へ戻った。
そして奥深くに仕舞ってあった冬物の上着を2枚取り、台所に行った。
「あたたかい飲み物を簡単なもので良いから、至急作って。
なかなか冷めないような、高温のものをお願い」
「わかりました!」
すぐにあたたかいお茶を作ってくれたシェフにお礼を言い、
わたしは車に向かって走り出した。



