リュンヌ王国が戦争中、ソレイユ王国も戦争中だった。

こちらは勝ったけど、その間リュンヌが滅びたと聞くまで、兄様と連絡が取れなかった。

リュンヌが滅びたと信じられなかったけど、その後のニュースで、オトンヌ国王様とエテ王妃様が亡くなったことを聞き、

滅びたのは本当だったと知った。



親交が深かった国に身内が住んでいると言う人は少なくなくて。

多くの国民がリュンヌ王国滅亡の事実を知り哀しみに暮れる中、ぼくは両親から兄様のことを聞いた。



兄様は、エテ王妃様が息を引き取る寸前、王子様を守り抜くと決めていたことを。

その後、王子と共に行方がわからなくなったことを。

「もしかしたら死んでいるかもしれないな」と両親は泣いていた。



後日、兄様に教えた家に、汚れた封筒が入っていた。

汚い字で書いてあったのは、兄様の名前。

中には黄ばんだあの写真と、兄様直筆の手紙が入っていた。



写真に写った、兄様と王子様らしい赤ん坊と、見知らぬおじさん。

兄様は王子様に、シエルと名付けたらしい。

ぼくは書かれてあった養護施設に、シエル様を迎えに行った。



だけど、シエル様はすでにいなかった。

シエル様がリュンヌ王国王子だと知らなかった施設の職員が、シエル様を養子に送り出してしまったらしい。

施設長に詳しく話を聞きたかったが、亡くなっているらしく聞けず、そのまま帰った。

シエル様の行方を聞いたけど、「個人情報なので」と教えてもらえなかった。



それから数十年の月日が経った時。

豪雨の夜、ぼくが開いている診療所にお嬢様から電話があった。

お嬢様が連れてきたのは、傷と痣だらけの少年。

お嬢様が引き取り、名前を聞いた所、その少年の名前はシエル。

同じ名前で驚いたけど、赤の他人だと思っていた。



お嬢様からシエル様の情報を集めてくるよう命じられる。

ぼくはいつも贔屓にしている情報屋に連絡し、調べてもらうよう言った。