☆ドクside☆




「おめでとうござます。エル様、シエル様」




キスを終えたふたりは、国民が作る道を通って紙吹雪に当たる。

心からの笑顔で、国民に祝福されるふたりは、本当に幸せそうだった。



「兄様…兄様も、どこかでご覧になっていますか?」



リュンヌ家に仕えるようになった兄様は、ぼくの憧れだった。

最初父の後を継ぎ鍵開け職人になろうとしていたぼくだったけど、兄様の姿があまりにかっこよくて。

執事を目指そうとしたけど、同時に人も助けたかったので、医者になった。

医者になって数年後、プランタン国王様から「執事にならないか」と誘われた時は本当に驚いたものだ。



異例の執事兼医者になったぼくは、仕えることになったソレイユ家に次期国王であるエル様が生まれ、リュンヌ王国へ向かった。

プランタン様とイヴェール様が、親友に生まれたことを伝えるためだ。



リュンヌ王国に行き、ぼくらは驚いた。

リュンヌ家にも、次期国王である王子様が生まれていたのだから。

同じ日に生まれたため、作詞が趣味のイヴェール様は歌を作り、作曲が趣味のエテ様は曲を作り、

ふたつで一緒になるよう、それぞれの子どもに贈った。

それと同時に、ソレイユ王国とリュンヌ王国の更なる発展と親交を祈り、対になる真珠を作った。

真珠を作った時、本来ならばソレイユの綴りはsoleilなのに、

soleiuになっていてエテ様がイヴェール様を見て笑っていたのを思い出した。

間違っていたからこそ、シエル様の持つ月の真珠が本物だとわかったのだけど。



王様同士王妃様同時話している時、ぼくの肩を叩いた兄様は、紙袋を渡してきた。

中には、月だの星だの描かれている黒い寝間着が入っていた。



『それ、お前に託すわ』

『どうしてぼくに?』

『エテ様が、今度ソレイユ家に泊まる時、王子様の寝間着がなかったら大変だろって。
だからそれ、ずっと置いてやってくれないか?
今度おれらが遊びに行く時のために』

『良いよ。ぼくがしっかり保管しておくよ。
でもこれ、だいぶサイズ大きくない?』

『大きくなっても行けるよう、ずっと親交や仲が続くよう願うためだって、エテ様が』



その後戦争が起こり、リュンヌ家がソレイユ家に来ることは永遠になくなってしまったけど。

着る人のいない寝間着はぼくの部屋にずっと保管してあった。

兄様との約束だったから。



『ドク。寝間着を貸してくれないかしら?シエルに着させたいの』



エル様に保護されたシエル様に必要だと聞き、ぼくは保管してあった寝間着を貸すことにした。

少しサイズは大きかったけど、シエル様に似合っていて。

ぼくはそのまま、その寝間着をシエル様に贈った。



その名前に、何だか兄様との約束を思い出したから。