それからもプーセはわたしの所に来ては、

わたしはシエルの名前を出した。

必ずプーセにキレられ襲われそうになるけど、

その度にアンスが来て助けてくれた。



アンスはたまに取っ組み合いで傷を作るけど、

「シエルの傷に比べたら大したことない」と笑ってくれた。

本当、わたしもシエルもとても良い友達を持ったものだ。




「そういや、シエルってどこに行ったわけ?」

「さぁ…詳しいこと聞いていなくて」

「シエルの計画が、イヴェール様と出かけることなのか?」

「わからないけど…もしかしたらそうなのかもしれない」



お茶を淹れながら話していると、アンスが笑った。



「俺、エルちゃんのこと見直したわ」

「え?」

「だって、来るたびに聞こえてくるんだ。
シエルが好きだっていう、エルちゃんの想いが」



『シエルが好き!』

『シエルしか好きになれないの!』

『シエル以外いらないわ!!』

連日プーセに向かって叫ぶ、シエルへのありったけの想い。

思い出して恥ずかしくなったけど、後悔はしていない。



「ふたりが同時に幸せになれるよう、俺もなんとかするから」

「知っているわよアンス」



最近アンスは休日になると、クザン家と取り引きのある大きな会社に自ら足を運び、

わたしとシエルの話をしてくれている。

わたしもシエルも一途にお互いを想っているのに、身分の差が邪魔をし結ばれないことをアンスは伝えてくれている。

一部の会社の社長さんは、『是非そのふたりを結ばせてあげたい』と言ってくれて、

またその会社が別の会社に話をすることで、わたしたちの話は広がっている。



「本当アンスって人脈広いわよねぇ」

「だろ~?
というか俺のお祖父様が広げてくれたからなぁ」

「今度お祖父様に会わせてちょうだい」



アンスのお祖父さんは、もう当主の座は就いていないものの、まだ生きている。

今度シエルと一緒に会いに行くことを約束し、わたしはお茶を飲む。



「シエルに会いたいなぁ」

「はぁ、恋って良いねぇ」

「アンスだって彼女いるでしょー?」

「おう!今度の休日デートだぜ!」

「末永く仲良くねぇ~」



わたしたちはクスクス笑った。