「エルちゃんから離れろっ!!」




グイッとプーセを引っ張ったのは、アンス。

制服姿で、息が上がっていた。



「離せアンスっ!!」

「ぜってぇ離さねぇから!」



わたしの部屋でふたりが取っ組み合いの大喧嘩をする。

誰かを呼ぼうとしたけどアンスに止められ、わたしは見守っているだけだった。



「また来るからな!
二度と俺の前で貧乏人の名前は出すな!」



プーセが出て行き、部屋には息を切らしたアンスとわたしだけになる。

わたしは水をグラスに淹れ、ソファーに崩れるように座ったアンスに渡した。



「ありがとうアンス。助かったわ。
ごめんね、見るだけしか出来なくて」

「俺の方こそ遅れてごめん」



アンスが鞄の中からスマートフォンを取り出し、軽く操作をしてわたしに見せた。



【えりそまのけと、ほくのかわるにおねかえね。
ほくはすうじつけん、るすにするけら。

ひーえす
よむにくくた、こめんなそい】




「この難読不可メールは、シエルからね」

「朝来て、ずっとこの解読してた。

エル様のこと、僕の代わりにお願いね。
僕は数日間、留守にするから。
PS、読みにくくて、ごめんなさいって書いてあるってようやく読んだ。

来ようと思ったんだけど、メール解読していて遅くなった」

「シエル…」



わたしのことをアンスに任せるなんて。

シエルの優しさに、嬉しくなる。



「それで来たら、プーセが襲いかかってて。
大丈夫か?」

「平気よ。わたしは弱くないわ」

「まぁたまには俺とかに頼れよ」

「ありがとう」