「……だがねぇ…」



プランタン国王様が呟く。

僕は前髪を上げ、真珠の冷たさに触れ、それを取った。

プランタン国王様もイヴェール王妃様も、僕が手に持つものに驚いていた。



「……ご確認願えますか、イヴェール様」



スッと、テーブルの上を滑らせる。

僕がずっと持っていた、紺色の紐に真珠が通されたネックレスを。

イヴェール様とプランタン様が驚いている間、前髪を流して真っ直ぐとふたりを見る。




「シエルくん……これは、月の真珠かね」

「わかりません……」

「どこでこれを」

「僕がいた施設の園長が、亡くなる寸前僕に渡してくれたものです。
僕が施設に連れてこられた時、身に着けていたものだと教えてくれました」



今更かもしれないけど。

本物がわかっている今、無駄かもしれないけど。

僕はずっと隠してきたそれを、見せた。

これしか僕は、武器がないから。



「……シエルくん」



イヴェール様が、僕の方へネックレスを滑らせる。

その声は低く、やはり偽物や偽装だと言われるのだと思った。



「本物よ」

「…………え?」

「ようやく見つけたわ。エテの形見を」



僕は俯いた顔を上げる。

イヴェール様は、ネックレスを優しく見守っていた。



「イヴェール様…プーセ様のを本物だと言いましたよね」

「ええ言ったわ」

「じゃあ僕のは偽物じゃ……」

「偽物じゃないわ。
シエルくんが持っているのが本物よ」



どういうこと?

イヴェール様は嘘をついた?

何のために?



「シエルくん。
あなたの時間を、暫くあたくしにちょうだい」



イヴェール様は笑っていた。

僕はネックレスを首からさげ、頷いた。