心に届く歌







「でも、シエル…わたしと一緒にいたって辛いかもしれないのに」

「それでも、エルちゃんと一緒にいたいんだろ。
不安だから、体調も崩して心のバランスも失っていたんだろ」

「……アンス、ありがとう」



わたしが入ってきた時、シエルの話を聞いていたアンスはニッと笑った。

でも、その笑みには少し疲れが見えた気がした。



「シエル、一緒にいて大変だった?」

「大変というか、見ていてすげぇ苦しかった。

両親のことについてうなされていたから、傷が相当深いんだって気づいた。

それに、一途な思いを伝えられない身分って差を知って、
無理だってわかっているのに認められないシエルを見て、
自分のように辛かった」



アンスは諦めたような笑みを浮かべつつ、ゆっくり呟いた。


「何でさ、ずっと苦しんでいたのに、神様って奴はシエルを幸せにしねぇんだろうな?
これ以上苦しめて、誰が喜ぶって言うんだよ。

どうして一途な、たったひとつの恋を叶えることが出来ねぇんだろうな」

「……アンス、大人ね」

「俺は無力なガキだよ。エルちゃんやシエルよりも年下な」

「そういえばアンス年下なのよね。忘れそうになるわ」



アンスは苦笑いをしながら、シエルの頭を撫でた。



「コイツには幸せになってもらいたい」

「アンスが今も気にしている、村の学校の子に似ているから?」

「それもあるけど……俺ら親友だから」

「シエルも言っていたけど、どうしてわたしたちは、親友とか好きな人って言葉だけで簡単に人を大事に出来るのかしら」

「……エルちゃんの言葉を借りるなら、人は単純なんだよ。
回りくどい言い方しないで、親友とかってストレートな言葉で表してそれを信じる。

単純だなぁ人って」

「うん……単純。複雑だけど、実は物凄い単純」



単純だからこそ複雑。

複雑だからこそ単純。

わたしたちはきっと、それで良い。



「シエルの計画ってのが何だかわからねぇけど、シエルだってわかっているはずだ。
自分の1番大切な、誰にも譲れないものが何なのか」

「わたしだって、わかってる。
わたしはわたしなりに、わたしの想いを叶えてみせる」



シエルのご両親は、相手がよくわからないままセッティングされたお見合いに参加しての結婚だった。

その間に愛があったのかはわからないけど、シエルに愛を注げなかったのは事実。

愛がない家庭に幸せはない。