『何で誰にも話さないで、自分ひとりで溜め込むわけ?
シエルもエルちゃんも、もっと俺のこと頼れ。
親友のこと頼ってくれよ』
「……ごめんなさい、アンス」
『謝るならさっさとシエルを迎えに来い。
シエルを助けられるのはエルちゃんだけだ』
わたしは頷き電話を切ると、深夜にも関わらず家を出て、クザン家に向かった。
こんな時間に出歩いたら怒られちゃう。
でも、シエルに会いたくて仕方なかった。
アンスが使用人に話を通してくれたみたいで、すんなり通される。
深夜1時のご訪問なのに、クザン家の人たちは優しい。
メイドさんが案内してくれて、初めて来た家の中でも怖くなかった。
素早くノックをして、中からの返事を聞かずアンスの部屋に入る。
そして真っ先に聞こえたのは、シエルの本音だった。
「何で、何で遠ざけるの。
何で僕の声で振り向いてくれないの。
僕ってそんなに役立たずだった?
傍にいたいのに。
傍にいたいのに叶わない人生なんていらない。
エル様に救ってもらったのに、
エル様に捨てられた人生なんていらないっ…。
僕のこと殺してよぉっ……」
泣きじゃくるシエルの話を聞きながら、目の前のアンスが溜息をつく。
そしてアンスはわたしを見て、ニッと笑った。
「来い」
「っ……ありがと、シエルっ!」
わたしはぎゅっとシエルに横から抱きつく。
抱きつかれたシエルは、涙でぐしゃぐしゃになった顔をわたしへ向けた。
「何でっ……」
「シエル。このままでいさせて。このまま泣かせて」
久しぶりのシエルのぬくもりに触れ、わたしの目に一気に涙が溢れる。
シエルはわたしの服を恐る恐る握る。
そして、ぎゅっと抱きしめられた。
「エル様っ…エルさ……エルっ…!」
「シエル。シエル、シエル、シエル……!」
わたしにシエルを突き放すなんて無理だ。
だってこんなにもわたしは、シエルに惚れている。
一生抜け出すことなんて出来ない、シエルという沼。
それでも良い。
抜けようなんて思わないから。
わたしたちは、アンスが笑う中、ずっと抱きしめあっていた。



