☆エルside☆
『ふざけるのも、自分に嘘つき続けるのもいい加減にしろ』
電話が来て、かけてきた人の名前を見ることなく出ると、相手に開口一番に言われる。
「何よアンス……」
『シエルが俺の家にいること知っているよな』
「ええ……知っているわよ」
シエルはあのまま家を出て行き、わたしに挨拶もなかった。
次の日の朝、ドクにアンスの家に療養のため行かせたと説明を受けた。
その後シエルが戻るかどうかは、本人次第だと。
『療養目的でシエルはうちに来たけど、もう限界だ』
「え?」
『シエルがすげぇ苦しんでる。
療養どころか悪化しているぞ』
「何でっ……」
『理由なんて知らねぇけど、シエルは確実に壊れかけてる。
体もそうだけど心もだ』
「どんな風に……?」
『熱は40度前後ずっとウロウロしているし、
ご飯だって食べねぇし、
何より、そろそろ自傷行為が復活するかもしれねぇ』
「えっ……だって治ったんじゃ」
『包帯巻いているだろ。
あれの上から爪で引っ掻いて外そうとしてる。
外れたら、絶対自分を傷つける』
「何でっ……どうして?」
アンスの言葉が理解出来ない。
『夜もうなされているし、もう見ていられねぇよ。
なぁ。
お前らさ、どうして相手の幸せばかり願うんだよ』
「…………」
『相手ばかり幸せでそれで良いのかよ。
どうして自分も幸せになろうとしないんだよ。
相手と自分、一緒に幸せになれって何で思えねぇんだよ』
「…………」
『エルちゃんが婚約した理由も、どうせシエルを幸せにするためだろ。
お前ら似た者同士だからお見通しだよ』
わたしは婚約届を書いた理由を話した。
シエルの悪い評判をなくすために書いたことを。
『ふざけんな。
どうして自分で対処出来ねぇんだよ』
「えっ……」
『エルちゃんなら、ソレイユ家なら消すことぐらい簡単だろ。
難しいなら俺が力を貸してやったし。
クザン家がエルちゃんとシエルの明るい未来を願っていること知っているだろ』
そうだ。
クザン家はわたしたちの味方だ。



