心に届く歌








それから数週間。

シエルはずっと夜中うなされていた。



ある日はあの両親を追い求める声を聞いたり。

ある日はエルちゃんを何度も何度も呼んでいたり。

必ず最後には涙を流しているシエル。

見ていられないけど、目をそらせなかった。




「おいシエル……大丈夫か?」

「ごほごほっ、平気…ありがと」



それに俺の家に来てから、シエルの体調が悪い。

朝から高熱を出し、最近ではずっとベッドの上で横になっている状態。

ご飯もそんなに食べられなくて、でも寝ようとしなくて。

欠伸を何度も殺しながら、シエルはぼーっと布団の一点を見つめていた。



「シエル寝て良いんだぞ?」

「っ…大丈夫」



普通に声をかけたつもりだが、シエルはビクッと体を震わせる。

…何だか、前より臆病になっていないか?

唇を結びながら一点を見つめるシエルは、何かに怯えているように見えた。



「シエル、家戻らねぇ?」



俺はシエルの顔を見ず、テレビを見つめながら言った。

テレビではキャスターが、エルちゃんの結婚式の準備が続いていることを報道している。

シエルは隣で、テレビを真っ直ぐ見つめながら泣いている。

嗚咽も泣き声も漏らさず、ただ涙を流しながらテレビを見ていた。




「やだっ……戻りたくない戻りたくないっ!
戻るんだったら死んだ方が良いっ」



シエルは伸びた爪で左手首の包帯を引っ掻く。

頑丈な包帯は簡単に外れないけど、シエルは何度も引っ掻いた。

最近、自分を傷つけたくてしょうがないらしい。



「シエル落ち着け」

「っ……嫌っ…」



右手を握り、そっと抱きしめる。

シエルは俺の服に頬をつけ、泣きじゃくった。

40度近い高熱にも関わらず、自分を傷つけたいなんて。


シエルの心はもう、限界だ。

療養目的で俺のもとに来たらしいけど、逆効果だ。



泣き疲れたのか眠ったのを見て、俺は電話を掛けることにした。

俺じゃ何も出来ないから。

シエルを救えるのは、たったひとりだから。