☆エルside☆




「シエル大丈夫かな…シエルシエルシエル……」



わたしは夜、ベッドの中でシエルの名前を呪文のように唱えていた。



朝廊下で座り込んでいる執事。

声をかけるとシエルだった。

苦しそうな息遣いで、でも熱はないみたいですぐに治った。



さっきドクとすれ違った時、シエルはドクの背中にいた。

疲れたらしいとドクは言っていたけど…。



『ひゅぅっ…ひゅうっ…はぁっ…』



ドクと別れて、聞こえてきたおかしい呼吸。

絶対あれ…シエルだった。

今日調子悪かったのかな…。



でも、声をかけることなんて出来なかった。

だってわたしはもう…シエルと今までみたいに接することなんて出来ない。

わたしは国王であり、シエルは執事。

身分差の大きなわたしたちが、仲良くすることなんて出来ない。

またシエルがお金目当てでわたしに近づいたと言われて苦しむなら。

わたしがシエルを突き放すしかない。



「自分で決めたのに…辛いな……」



ぎゅっと布団を握る。

わたしひとりしか眠っていない、大きなベッド。

前には隣にシエルがいたのに、今は誰もいない。