心に届く歌







――カシャンッ……





「…………え?」




髪の毛の上から額にキスをした時、前髪が揺れた。

そして聞こえた、何かが揺れる音。

辺りを見渡すけど、窓は閉まっていてカーテンもしまっている。

風が吹いた気配などなかった。



風が吹いた吹いていないじゃない。

今のは……何の音?

何かが揺れる音だったけど、この部屋には小物なんて置いていない。

必要最低限のものしか置いていないから、揺れるものなんて置いていない。




「…………まさか……」



わたしは、お風呂上がりにシエルが全ての前髪を上げた時、何かが光ったのを思い出した。



もしかしてシエルが前髪を上げない理由って、

長い前髪に何かを隠しているから?

それが、わたしが額にキスをした拍子に揺れた?

月明かりを浴びて輝いた?




「前髪に何かを隠すなんて……」



聞いたこともないけれど、もしそうならシエルが前髪を頑なに上げない理由もわかる。

シエルにとって『それ』は大事なもので、誰の目にも晒したくないから。

だけど死ぬ時は前髪を上げるかもしれないから、誰かの目に晒される。

だから前髪を上げるのは、『僕の最期』なんて言ったんだ。