心に届く歌







「おじさんっ!」

「お嬢様!」

「入るわねおじさん!」



わたしはおじさんとの挨拶もそこそこに、階段を駆け上がり2階へ向かう。

【セレーネ】と書かれたネームプレートを見て、急いで部屋に入った。

鍵は開いていて、すぐに入れた。



「シエル!」

「……エル様」

「お嬢様…いらしたのですか」



ベッドに座り、ドクの手当てを受けていたシエルは、ゆっくりと変わらない暗い表情を向けた。




「ドク……シエルは」

「先ほど精密検査をしましたが、問題はありませんでした。
傷もすぐに治るでしょうね」

「そう……良かった、ありがとう」



『実は先ほど、シエルさんが階段から落ちまして。
出血をしていたので、ドクさんが今手当てをしております』




「もう……心臓止まるかと思ったんだから」

「……ご迷惑をお掛け致しまして、申し訳ありませんでした」

「気を付けてよね」



わたしは大きく息を吐き出し、シエルの隣に座る。

頭に大きめのガーゼを貼ったシエルは痛々しいけど、治るみたいだから良かった。



「シエル……顔色悪くない?」

「……え?」

「ほら……ちょっと熱あるよ」



暗いのもあったけど、顔色が悪かったので額に手を当てると、シエルは熱を出していた。



「……そういえば…少し熱いです…」

「もしかしたら少し傷口から菌が入ったのかもしれませんね。
これ以上熱が上がらないと良いのですが」



シエルは大きく息を吐くと、ゆっくり腰から折れる形でベッドにうつ伏せに倒れ込む。

微熱だと思うけど、何だかだいぶぐったりしているように見える。



「シエル…………」

「エル様……」



名前を呼ぶと、シエルはこっちを見て、左手を伸ばしてくる。

わたしがきゅっと握ると、シエルも握り返してくる。



「……ごめんなさい…熱出ると、不安で……」

「無理もないよ。大丈夫。
体勢きつくない?」

「……少し、きついです」

「ちゃんとお腹を上に向けて、布団かけて寝よう?
寝たらすぐに治るよ」



シエルは頷き、もそもそ動く。

あんまり動けていなかったみたいで、ドクが抱き上げベッドに寝かせてあげていた。



「……我が儘…迷惑かけて、良いですか…?」



シエルは確かめるように、不安げに聞いてくる。

わたしは頷いた。



「……一緒に、いてください」

「良いよ。一緒にいる。だから平気だよ、シエル」

「……意思弱いなぁ…本当」



シエルは呟くと、そっと目を閉じ眠りにつく。

本当は寮ではなく部屋に連れて行きたいけど、こっちの方が安心な気がする。



「お嬢様、シエル様の熱が上がったら、呼んでもらえますか」

「わかったわ」



ドクが部屋を出て行く。

わたしはシエルの手を繋いだまま床に座り、シエルの寝顔をずっと眺めていた。