そして、夜7時。
わたしは真っ暗な部屋で、ベッドの上座っていた。
涙はいつの間にか消え、ぼーっとしてしまう。
「…シエル……」
さっきから呟くのは、シエルの名前だけ。
わたしに必要なのは、シエルなのに。
どうして身分の差だけで恋が叶わないんだろう。
「シエル……会いたい…」
きっと部屋で夕食を食べることも、
一緒に1枚の布団で眠ることだってない。
夜に怯えていたシエルを抱きしめることもなければ、
シエルが何故あそこまで頑なに前髪を全て上げないのかも聞くことは出来ない。
当たり前に出来ていたことが出来ないのが、こんなにも辛いなんて。
『コンコンコンッ』
「……どうぞ」
わたしはぼーっとしている頭で、返事をした。
わたしは今日、壊れる。
「失礼致します」
しかし入ってきたのは、メイド長だった。
わたしには厳しいのに、シエルにはとても優しい人。
年齢がもうお父様やお母様よりも上だから、シエルのお祖母ちゃん的存在になっている。
「エル様、ちょっとよろしゅうございますか」
「何?」
「今すぐ、シエルさんの元に行ってください」
「……シエル?シエルに何かあったの?」
「実は」
わたしはメイド長から話を聞き、急いで部屋を飛び出した。
途中「おい、エル」とプーセとすれ違ったけど、止まることなんてなかった。



