心に届く歌







☆シエルside☆




「……ははっ…」



部屋を出て、少し走って、僕は止まって乾いた笑いを漏らした。

別に眩暈がしたわけじゃないけど、壁に寄りかかりそのまま座り込む。



「……現実を受け止めてください…か。
それを、僕が言うか……」



深く溜息をつき、立ち上がる。

最近では貧血の薬を手放せるようになって来た。

ふらふらしないのは良いことだし、治って嬉しい。

だけど、治ってほしくなかったって思う僕もいる。



「……僕がまだ貧血持ちだった頃は、エル様に会っていなかったな…」



気付いた時からあった貧血。

眩暈が酷い日は、ここで死ぬのかと本当に思っていた。



「……こんな苦しいなら、出会わない方が良かったかな…」



出会って嬉しかった。

僕がいた世界はちっぽけだったと知った。

だけど……出会っていなかった頃も、少しは幸せだった。

大事な人に本音を伝えられないことが、こんなにも辛いことを知らなかったから。




「……現実、受け止めなくちゃ。
エル様の幸せを、ただ願わなくちゃ駄目だ。

エル様を幸せにするのは、僕じゃない……」




知識は蓄えられたけど、それ以外は何もない。

いつ捨てても可笑しくなかったから、全てを僕を変えてくれたエル様に捧げると決めた。

捧げるとは決めたし、幸せも願うけど、それを叶えるのは僕じゃない。

エル様を幸せにするのは、知識は勿論、肩書きだって素晴らしい人。



何もない僕はただ。

あなたの幸せを願うことしか出来ない。

願うことしか。