心に届く歌







「……シエ、ル…」



シエルのぬくもりに触れ、視界がどんどん滲む。

震えているわたしの声に、シエルは「はい」と優しく返事をした。



「……わたし、シエルが、好き」



もう、抑えきれない。

こんなにもあたたかなぬくもりに触れてしまったのだから。

情けなくぼろぼろ涙を流したわたしは、シエルの手を握り返した。



「好きなの。
わたし、シエルが好きなの。

拒否されるかもしれないって、思っているのに。
学習能力がなくって、本当にごめんね。

わたし……シエルが、好き」



みっともない顔をしているであろうから、見られたくなくて。

わたしはシエルの執事服に、そっと額をくっつけた。




「……エル様」

「っ」

「そんなに怯えないでください。
僕も、あなたのことが、好きですから」



わたしは思わず、見られたくなかったはずの顔を上げていた。

シエルはぎこちなく笑みを浮かべていた。



「シエ―――」

「でも、ごめんなさい。
僕じゃ、あなたの気持ちに答えられません」

「…………っ」

「あなたのことは、本当に好きです。
でも、僕じゃあなたを幸せにすることなど出来ない」

「そんなのっ……」

「そんなの関係ない。
僕もそう言えたら良いのですけどね。

でも……エル様。
現実を受け止めてください。

僕は、執事であり村出身なのです。
本当は今だって、手を繋ぐことなんて許されない。

僕たちの間には越えられない壁があるってこと、自覚してください」



「生意気なこと言ってごめんなさい」とシエルは謝る。

ずっとずっと声は震えていて、辛そうだった。

シエルだって、本当は……。




「ごめんなさい……お手洗いに行ってきます」



シエルはわたしの手をやんわりと外すと、

逃げるように部屋を出て行った。




シエルだって、本当は、

現実を受け止めることが出来ないんじゃないの……?