『まぁ、俺もエルちゃんもいるし、大丈夫だろ』
根拠がない言葉を何度も使うのは、それが安心出来るから。
「ええ。
シエルに大事な人が出来るまで、わたしは傍にいるって決めているから」
『はぁーあ!』
突然わざとらしく大きな溜息をつくアンス。
「何よ、溜息なんてついちゃって。
幸せが逃げるわよ」
『幸せが逃げるようなもんだ。
あのなエルちゃん、いつまでそんなこと言っているんだ。
シエルの大事な奴はエルちゃんだろ』
「じゃあ、傍にいる必要ないかしら」
『そうじゃなくて。
エルちゃんさ、本当にシエルとこのまま執事と主の関係でい続けて、それで良いのか?
そんなレールの上だけを歩く人生で良いのか?』
「……アンスはさ、わたしにどうしてほしいの?」
アンスの言うことは正論で。
わたしはアンスの言葉にカチンときた。
どうしようもなく、悔しいから。
「シエルの笑顔を見ることが出来たら告白しろ、とか
レールの上だけを歩く人生で良いのか、とか。
アンスはわたしにどうしてほしいのよ!」
『え、エルちゃん!?』
「わたしは、自由な人生なんて始めっから存在しないの。
生まれてからずっと、次期国王になるため勉強してきたし、婚約者とも大勢出会ってきた。
これからもわたしは、決められた人生を歩んでいくの。
それなのにアンスは何なの?
そんなので良いのかなんて。
しょうがないじゃない。
わたしには、決められたレールの上だけを歩く人生しかないの」
アンスは何か言っていたけど、わたしは通話を切った。
…アンスに八つ当たりしたいわけじゃない。
アンスの言うことが、哀しいほど正しいだけ。
決められた人生に反論も抗うこともせず、ただ「わかった」と頷いて歩いているわたしが嫌になっただけ。
わたしだって、出来れば学校に行きたかった。
沢山街に出歩いて、様々な発見をしたかった。
…シエルに気持ちを伝えて、結ばれたかった。
だけどわたしはソレイユだから。
ソレイユの名字を持つ、王族であり次期国王だから。
100代目正統王位継承者の肩書きを持っているから。
それを捨てるなんて真似、臆病なわたしには出来ないから。
そもそも、わたしがもし肩書きを捨ててしまったら、きっとこの王国は終わる。
お父様もお母様も一人っ子だから、わたしがいなくなれば跡継ぎもいなくなる。
ソレイユの名字を持ち生まれてきたのだから、この国を捨てるわけにはいかない。
捨てる以外、わたしが自由になる道などないから。
「……自分の気持ちを押し殺すしか、ないのよ…」
抑えきれないほど膨れ上がっても。
見て見ぬふりをして、わたしは生きなくちゃいけない。
ソレイユ王国に住んでいる、国民の未来が涙で溢れないようするためにも。



