心に届く歌







『……寂しく、なるな』



お父様と別れ、一緒に部屋に戻り、ソファーの上で朝ご飯を食べた。

その後シエルは眠ってしまったので、わたしはアンスに電話をかけていた。

多分今日の結果が心配で、眠れなかったのだろう。

心配性な所も、わたしのツボだ。



「時間があったらいつでも来なさいよ」

『オッケ。何度だって行ってやるよ』

「そういえばテスト順位、3位おめでとう。
去年の2位よりは下がったけどね」

『結果だけ見れば下がったけど、良いんだよ。
シエルが頑張っていたの、俺知っているし。

しっかしエルちゃんもすげーなぁ?
また1位か。

どれだけ連覇すれば気が済むんだ?』

「1年後無事跡を引き継いだら受けないから、今年で最後よ」

『それはそれでまた寂しいな』

「今度はアンスがわたしの代わりになりなさい?」

『俺も当主になったらやらねぇよ。
それで、次の俺たちみたいなのが競うんだ』

「ふふ、それはそれで面白そうね」



わたしはふふっと笑い、気になったことを聞いてみた。



「シエルの評判はどう?おじさん何か言ってた?」

『お父様?
あぁ、かなり凄い、快挙だって朝から騒がしかったな。
村出身だと知っているからな』

「他の人の印象はどう?」

『エルちゃんテレビ観てねぇの?』

「テレビ?観ていないけど」



部屋にあるものの、使われていない大きめのテレビ。

使われるのは、わたしが観たいと思った恋愛ドラマが放送されている時だけ。



『テレビでテスト結果を報じているのは毎回のことだろ?
今回、シエルばっかり放送されているぞ』

「え?」

『エル・ソレイユの執事だってことも、そのために頑張っていたことも、村でどんな生活をしていたかもな。
ティラン伯爵の家でのことは放送されていねぇみたいだけど』

「じゃあつまり……シエルがご両親からどんな目に合っていたかも?」



わたしはシエルを見る。

ソファーの上横になり、薄い布団を掛けてぐっすり眠っている。



『ああ……。
工場でのことも色々言われているぞ。
そこの工場長が逮捕されたことは元々ニュースでやっていたからな』

「どんな意見が寄せられているの?」

『テレビでは明らかになった村の実態が取り上げられているな。

中心街から離れているとどんな悲惨なことが起きているか、シエルが2位を取ったからわかったとかナントカ、専門家とかがコメントしてた。

街の意見は……賛否両論だな。

村出身が初めての執事になるってことで、今まで大学卒が優遇されてきた社会が変わるんじゃないかって期待を寄せている奴もいる。

一方で村出身の奴に、いくら2位を取ったとしても執事なんて出来るはずないだろって。
仕えるのが次期国王のエルちゃんだってことも、反対派の理由みたいだな』




……何だか、似ている気がする。

わたしも、次期国王が女だなんて、出来るはずないや治められるわけないって言われていた。

その半面では、初の女国王としてソレイユ王国が大きく発展するんじゃないかと言う期待の声もある。




『どうなるかはわからねぇな……。
シエル、正式に執事になるんだろ?』

「ええなるわ。
お父様から今朝、執事の証のバッジを受け取ったから」

『まぁ……シエルなら大丈夫だろ』

「ええ……大丈夫よね」



わたしの大丈夫に根拠はない。

きっと、アンスの大丈夫にも根拠はない。

大丈夫なんて……本当はとても脆い言葉だ。