「プランタン国王様、僕は大丈夫です」
「シエルくん……」
「別れるのは……確かに寂しいです。
でも、僕にはやることがあります。
中退の手続き、してもらっても良いでしょうか」
「……わかった。やっておく」
「ありがとうございます。
それでは明日からまた、よろしくお願いします」
シエルは少しお父様から離れ、深々と頭を下げた。
絶対、絶対辛いはずなのに。
友達と別れるのは辛いって、わたしは知っているから。
でも、執事になると言う目標を叶えるため、シエルは辛さを自分の中に押し込める。
「……シエル」
声をかけると、シエルは頭を上げてわたしを見た。
その目に涙はないものの、潤んでいた。
「……良いよ、泣いても」
「…………」
「辛いもんね。良いよ。泣いても」
腰の隣にあったシエルの右手を、わたしは両手で包み込み、ぽんぽんと優しく叩いた。
シエルを見てにっこり笑うと、シエルの頬に涙が伝った。
「大丈夫。また会えるよ」
「っ……はいっ…」
クザン家とソレイユ家は長い付き合いだ。
絶対いつか、また会える。
わたしの手を震えた手で握ったシエル。
その頭を、お父様が優しく撫でていた。
「明日から頼むぞ、シエルくん」
「よろしくね、シエル」
「はいっ……!」
シエルは空いた左手で涙を拭うと、大きく頷いた。



