お父様はふっと笑った。
「よく気がついたね」
「でしょ?
しかもわたし、どうしてお父様がシエルを学校に行かせたのか、その理由もある程度予想出来ていたのよ」
「おや何だね、言ってみなさい」
「シエルに『人』を教えるためじゃないかしら?
手を出さなくても人に無条件に優しく出来る『人』を教えるために、
多くの人が集まる学校に行かせたんじゃないかしら?」
わたしの予想に、お父様はニヤリと笑った。
「流れは合っているな」
「流れ?」
「まぁ正解だろう。
シエルくんに確かに『人』を教えるために学校に行かせた。
だが、その『人』は誰でも良いわけじゃなかった」
「え?」
「エルが言った通り、学校には多くの人が集まる。
必ずしも、全員がシエルくんに優しいわけじゃないだろう?
現にシエルくんは村出身だと発覚した後、冷たい視線を送られたそうじゃないか」
「……何でそれ知っているの?」
シエルが村出身だとクラスメイトに発覚してしまったことは、報告済みだ。
だけど、冷たい視線を送られたことなど言っていない。
「想像?」
「まぁ想像もしたがな。
確信を持ったのは、ある人から聞いていたのだよ」
「ある人……?」
「そうだ。
その人こそ、シエルくんに学校で会わせたかった『人』だ」
「……まさか!」
お父様と連絡を取り合うほど仲が良くて。
シエルの傍にいた、学校で会った『人』。
「……アンス?
アンスが、お父様のスパイだったのね」
「そうだ。
元々クザン家はお祖父さんの代から我がソレイユ家とも縁があってな。
流れで今の当主やアンスくんとも親しかったんだよ。
だから任せたんだよ、わしは。
アンスくんにシエルくんのことをね」
ずっと繋がりがあったクザン家の次期当主。
明るくてコミュニケーション能力が高い彼は、人見知りで引っ込み思案なシエルに丁度良かった。
シエルとアンスを会わせるため、お父様はシエルを学校へ行かせた。
「色々な使用人から聞いているが、シエルくんはアンスくんと上手くいっているそうじゃないか。
しかもアンスくんはエルとも仲が良い。
好条件が揃った、良い物件だったよ彼は」
「物件って……家じゃないんだから」
でも、シエルだってアンスに救われた部分は少なからずあるだろう。
現にこの間、アンスはシエルを背負って家までやってきた。
アンスの背中に乗り眠るということは、アンスを信頼している証拠だとわたしは思う。
もっとアンスを警戒していたら、眠るなんて無防備な姿を晒せるわけないから。
「ただ、アンスくんとシエルくんは思ったより仲良くなったね。
出来ればこのまま卒業までいさせてあげたいが、
シエルくんには執事としてやってもらいたいことがあるからな…」
シエルは自分より背の高いお父様を見上げ、首を振った。



