心に届く歌








「そうだシエルくん……」

「はい?」

「言おう言おう思っていて今思い出したから言うな?」

「はあ………」



お父様の顔が妙に真剣になって。

でも国王としての顔ではなく、父親のような顔だった。



「執事になった暁の話、まだしていなかっただろ」

「……学校の、話ですか」

「そうだ。
わしとしては、これからは正式にエルの執事として学んでほしいと思っている。

つまりは、今の学校を中退ということになる」

「…………」



シエルは黙って俯いた。



学校を中退する。

それは、一種のアンスとの別れになるのかもしれない。

次期当主のアンスだから、卒業してからきっと気軽に会えない。

そもそも1年後にはわたしは国王の座を継いでいるから、こっちだって忙しいだろう。

会える時間は学生時代の今しかないのかもしれない。




「……わかりました」

「シエルくん…」

「学費を出してもらっていますし、色々と助けてもらっています。
エル様だけではなく、プランタン国王様やイヴェール王妃様にも恩返しをしたいと思っています。

これからは学校には行かず、執事としての肩書きに恥じぬよう頑張りたいです」



シエルは俯いていた顔を上げ、ぎこちなくお父様を見て笑う。

その声が、若干震えていたのは…きっと気のせいじゃない。



「……お父様、ひとつ聞いても良いかしら」

「ん?どうしたエル」

「どうして、シエルを学校に行かせたの?」



シエルはわたしの質問にきょとんと首を傾げた。



「それはエル様、知識が皆無だった僕に知識をつけようとしてくれたからじゃないのですか?」

「わたしも最初はシエルと同じようなこと思っていたわ。
でも良く考えてみなさい?

わたし、学校行っていないのにテストを受けたのよ。
他の人も、社会人になっても受けている人だっているわ。

別に学校行かなくても、家庭教師に教われば勉強出来たし、テストだって合格出来たはずよ」



学校に行かなくてもテストは合格点にきっと達していた。

それなのに、お父様はシエルを学校へ行かせた。



「お父様。
どうして『行かなくても良かった学校』に、シエルを行かせたの?」