その日の夜。
お風呂を上がり、わたしは部屋の扉を開けた。
すると、シエルがベッドの上に横顔を向けて座っていた。
寮にベッドはあるものの、わたしの我が儘で一緒に寝るよう言っている。
「シエル」と呼びかけようとしたわたしは、気づいた。
シエルの様子が、いつもと違うことに。
電気がついていない、月明かりだけが注ぐ部屋。
ほぼ真っ暗な部屋で、シエルはベッドの上布団に座りつつ俯いていた。
そして、スッと手を上げると、
サッと慣れた手つきで前髪を全部掻き上げた。
初めて露わとなる、シエルの白い肌の広がる額。
その額には、月明かりで何かキラリと光るものがあった。
何かしら…と首を傾げていると、シエルは前髪を再び下げてしまった。
そしてこちらをゆっくりと振り向き……前髪の向こうの目を遠くからでもわかるぐらい見開いた。
「エル様……っ、いつからそこに!?」
「いつからって……」
「まさか……見ました?」
シエルの視線と声は警戒心に満ち溢れていて。
わたしは首を振った。
「何の話?
わたし今来たばかりよ。
扉開けたらシエルが突然こっち向いて叫んで…驚いたわ」
「……驚かせてしまい、申し訳ありません」
「謝らないでよ。
それより早く寝ましょ」
「……はい」
寝る準備を済ませ、一緒に同じ布団の中に入る。
シエルは疲れていたのか、布団に入りすぐに眠ってしまった。
寝息が聞こえる中、わたしは少し上体を起こし、シエルの長い前髪を見た。
上げたい。
見てみたい。
でも……シエルがあんな警戒心を向けるのであるなら、見てはいけない。
わたしは見たことを忘れることに決め、眠りに落ちた。



