「約束?」
「ああ」
「良いわよ。何?」
「シエルの心が完全に開いて、シエルが心からの笑顔を見せた暁には、エルちゃんもう1度告白しろ」
時間が一瞬、止まった気がした。
「……前言撤回」
「は?」
「無理よそんなの……。
だってシエルに言われているのよ、わたし。
金輪際好きだなんて言わないでくれって」
「あのエルちゃんが撃沈した時か」
「そうよ……」
チクリと胸が痛む。
失恋の傷は癒せていないみたいだ。
「前言撤回は許さねぇぞ、俺」
「えぇ!?」
「シエルが本当の笑顔を見せた時には、エルちゃんはもう1度告白しろ。
シエルがその時まで好きならな」
「……その時まで好きでいる自信は正直あるわ。
わたしはシエルに大事な人が見つかる日まで傍にいるって決めているから」
わたしの目標は、シエルの笑顔を見ることだけではない。
勿論それもそうだけど、シエルに大事な人が見つかり、わたしの傍を離れて行く。
その日まで離れず傍で支え続ける…それがわたしの目標だ。
「だから実は……ずっと気にしているの。プーセのこと」
シエルと出会った豪雨の日から出会っていない婚約者・プーセ。
従兄弟のアンスによれば女遊びをしていると聞くけど。
「わたしはシエルを好きでい続ける。
でもそれは、婚約者であるプーセに酷いことをしているわ」
「まともにプーセを愛する気があるんだな」
「あるわ。
でも、きっと無理だわ」
きっとプーセにシエルと同じようなあたたかな気持ちを持てない。
ここまでわたしを変えてくれるのは、昔も今もシエルだけ。
「だから出来る限り、プーセにはシエルのことを伏せておくつもり。
執事になる予定だから、シエルのことは言うつもりだけど、気持ちは伏せておくわ」
「自分の気持ちに嘘、つき続けるってことか」
「……そもそもの話考えてよ、アンス。
わたしは、ソレイユ王国正統王位継承者よ。
シエルとの恋愛なんて、国民が許すはずない」
次期国王の相手は、相応しい相手であれ。
決まってはいないけど、暗黙のルール。
現にお母様は伯爵の娘で、ソレイユ家出身のお父様と釣り合う身分だった。
王族と村出身が恋人となり後に結婚なんて起きたら、この国がどうなるかわからない。
親交があったけど戦争により滅亡した国・リュンヌの存在があるから、争い事にはならないと思うけど。
「……はぁ。過去好きになった相手には幸せな、自由な恋愛してもらいてぇんだけどな」
「わたしだって、自由な恋愛をして、幸せになりたかったわよ」
願わくば、大事な相手と。



