わたしたちは寝ずに、次の日を迎えた。
わたしは寝なくても平気だったけど、
シエルが疲れ切ったような虚ろな雰囲気を出していた。
朝ご飯であるお粥も、半分ほどしか食べなかった。
「シエル」
「だいじょ、ぶです……」
大丈夫言うけど、声にそもそも覇気がない。
「寝ていて良いよ?」
「……だいじょ、ぶです……」
「シエルの大丈夫はアテにならないねー」
笑いながら言うと、シエルはゆっくり起き上がる。
そして挫いた足に力をかけないよう、傾いて立つと。
「それじゃ、学校行ってきますね……」
「はっ!?」
引きずって歩きだすシエルの手を引っ張る。
「何言っているの?大人しくしていなさい」
「だって勉強……。僕執事にならなくちゃ…」
「そんなうわ言みたいに言わないで。
駄目、今日は家にいなさい」
「でもっ……」
「学校に行ったってシエルが辛いだけだよ。
覚えているでしょ?」
学校でのことを思い出したのか、俯くシエル。
わたしはゆっくり腕を引き、シエルをベッドの上座らせた。
「そんなに勉強したいの?」
「だって僕……執事にならなくちゃ」
「……じゃあ、ここでしなさい。
家庭教師のひとりやふたりいるんだから」
「……僕なんかが家庭教師なんて…」
「良いから」
内線電話を使い、今日シエルに勉強を教えることの出来る家庭教師を呼ぶことにした。
「1時間後に来るらしいから、ここで勉強しなさい。
机はわたしのを貸すから」
「……ごめんなさい…ありがとうございま」
プツンと言葉が切れる。
見ると、シエルはそのままベッドに背面ダイブし、
静かに寝息を立てて眠っていた
「……まったく。ちゃんと寝なさいな。
人は夜寝るように出来ているんだから」
わたしは苦笑交じりに、シエルに布団をかけたのだった。