「前にテレビで観たことがあるんです。
虐待は連鎖するんだって。
両親と僕の血は繋がっていないけど、
あの人達は僕の育ての親。
ずっとあの人達の元で育ってきた僕は、
将来、相手を傷つけないと生きて行けないんじゃないかって。
大人になるのが怖いって思っていた時期があったんです。
だけどそんなの、大人も子どもも関係なかった。
暴力を振るう親の元で育った子どもは、
いくつになっても相手を傷つける行為は変わらないんです。
きっとこれからも、僕は誰かを傷つけないと生きていけないっ…」
「そんなこと…」
「そんなことないって言いきれますかっ!?
現に見たでしょう?
僕が彼女の首を絞めていたの。
あの時、自分の心がいかに冷えているかわかりました。
あんな最低な行為しても、何も何も思わないんですから。
死んでしまっても良い。
自分が殺人者になっても良い。
そう思いながら僕は彼女の首を絞めていた……。
こんな欠落した人間に、何で他の人は優しくするの!?
こんな奴に優しくしたって何の意味もないのに!
というかこんな苦しいのなら殺してしまった方が楽なのに!!」
「ちょっシエル!?」
「死んでほしいから義母は僕にカッターナイフを与えた。
あれ、最初は義母からのプレゼントだったんです。
両親の前で切っても、
クラスメイトの前で切っても
『切らないで』なんて一言も言われなかった。
むしろ『もっと切れ』って笑ってた。
皆僕に死んでほしいのなら…さっさと殺してくれ方が良かったのにっ!!」
「シエルっ!!」
わたしはぎゅっと抱きしめた。
「そんなに自分を責めないで良いのに。
苦しくないの?そんなことばかり言っていて。
わたしはすごく苦しいよ」
「……っ」
「シエル。
死にたいとも殺してほしいとも言わないで。
そんなこと本気で願っている人が、わたしにキスなんて出来るはずない」
「……っ」
「切りたくなったらわたしに言って。
『もっとやれ』じゃなくて、『切らないで』って言うから。
言ってほしくて、誰かに止めてほしくて、人前で切っていたんでしょ?」
「……」
「本当は、生きていたいでしょ?
だから、存在確かめたくて切っていたんでしょ?
自分が生きている証明が欲しくて。
わたしが教えてあげるから。
シエルがここにいるって、生きているって教えてあげるから。
現にシエルは、わたしの腕の中にいるよ。
ちゃんとぬくもりがあるよ。
死んでいる人は、心が冷えた人は、こんなにあったかくない」
ぽたっ、ぽたっと、
布団に涙がこぼれる音がする。
わたしはぎゅっと、シエルを抱きしめていた。



