「んっ…」
前髪がふわりと揺れる。
目が開いた合図だ。
「シエルおはよう」
「…エル、様…?」
上体を起こし、眠そうな瞳で辺りを見渡すシエル。
「さっきまで僕…寮にいたのでは…?」
「寮にいたけど、お父様があなたを連れてきたのよ」
「プランタン国王様が…?」
「泣き疲れて眠っちゃったみたいね。
もう辛くない?」
シエルはわたしを見つめ、こくりと頷いた。
そしてゆっくりと、わたしを抱きしめた。
「…シエル?」
「…ずっとずっと、会いたかったです。
シェフさんに買い物を任されて、帰る時、両親がいて。
スタンガンで気を失わせて、気付いたらあの家にいました。
怖くて、痛くて、仕方なかったです」
「シエル…頑張ったね」
ぽんぽんと背中を撫でると、堰を切ったかのように話しだした。
「あの奥の部屋に連れて行かれて、警棒で殴られて。
何度も何度も気を失いそうになったりして、
本当にこのまま死ぬんじゃないかって本気で思いました。
そうしたら、無性に自分を傷つけたくなって、切りたくなりました。
だからカッターナイフ探して、切ろうとしたんです。
でも、寸前にエル様の、僕を呼ぶ声が聞こえて。
忘れかけていたんです。
僕、あなた様に救われて、恩返し目的で執事になりたいって思ったこと。
思い出して、切るのやめましたっ…」
「そっか…よく我慢出来たねシエル」
癒えてきているとはいえ、傷口はかなり深い。
切ったら命の危険性になるだろう。



