「キミが裏切ると思わないんだよねぇ。
どっちかっていうと、裏切られる方が多そう」
「……本当のことなので、否定は出来ないです。
でも、僕がソンジュさんを裏切ったのは事実です…」
「…まぁ話したくないのなら話さなくても良いよ」
ポンポンと頭を撫でられる。
僕はぎゅっと唇を噛みしめた。
「ねぇシエルくん。もっと気楽になりなさいな」
「え?」
「そんな何かに耐えていたり、触れられただけで震え出すような生き方しないで、もっと楽に生きるようにしたら?」
「……」
「まぁ難しいかもしれないけどねぇ。
キミの生い立ちは聞いているけど、特殊だから」
「……人間が怖いので…難しいです…」
「人間が怖い、ねぇ。確かに怖いよねぇ」
「…怖いと思う時、ありますか」
「あるよ。
だって人間には心があるから。
心を持った人間が1番怖くて1番の恐怖の対象で、でも1番優しいんだよね。
心を持っているから、憎しみも嬉しさも存在するからね。
痛みや嬉しさを知っているから、きっと1番優しいんだよ」
「優しい…?」
「少なくとも、キミを含めたわしの周りは全員優しいよ」
「僕が…?優しい……?」
「うん。
だって、お義父さんとお義母さん、大好きでしょ」
「っ」
「ドクくんから一部始終は聞いているよ。
『僕が自分で怪我したから、連れて行かないで』
どんな親でも愛せるのはすごいことだよ」
「…ひとりになりたくないだけですっ…。
ひとりになるのが怖いから、どんな人も手放したくないんです」
「ひとりになりたくない。
そりゃそうだよねぇ。
わしも今全てを失ったらすごく辛いはずだよ。
辛いって言葉でカバー出来ると良いけどね。
シエルくん、でも今キミはひとりじゃないよ」
「……」
「エルがいてアンスくんがいて、ドクくんがいて、シェフがいておじさんがいて、わしとイヴェールがいる。
ほら、キミはひとりじゃないよ」
プランタン国王様は僕の脇の下に両手を入れると、そっと抱き上げた。
ふわりと体が浮き上がり、膝の上に乗せられた。
「あっ、あの…?」
「へぇ、今時の子は結構軽いんだね」
「僕…一時期ゼリーぐらいしか食べていなかったので…。
普通はもう少し重いと思います…」
「じゃあもっとシエルくんも食べなくちゃね」
クスクス国王様は笑い、僕を後ろから抱きしめてきた。



