シェフとメイドが出て行き、わたしたちはご飯を食べる。
涙をこぼしつつ美味しいと言うシエル。
わたしは、美味しいご飯が当たり前だった。
ずっとずっと、プロが作ってきた料理を食べる。
だけど…シエルにとっては、それが珍しいこと?
「シエル美味しい?」
「すっごく美味しいですっ…」
「シエルって、泣き虫だよね」
「……ずっとずっと、賞味期限切れた、世間からイラナイと言われているパンばかり食べていたので」
「は?」
「食べること、自然と拒否しちゃうんです…。
一時期は本当に、まともなご飯を食べても気持ち悪くなっちゃって。
ここに来た時、最初はそうだったの、覚えていませんか?」
そういえば、最初出会った頃は、シエルは食べても戻してしまうことが多かった。
食べられても、お粥を少しってぐらいで。
でも最近は、ちゃんとわたしと同じようなご飯も食べられるようになって来た。
「…でも、ここにいる分、体が訛っている気もするんです。
風邪なんて滅多に引かなくて、体調も悪くならなくて。
ここに来てからは、体調を崩すことが増えたりしています」
「…シエルの今までが過酷だったから、ずっと体が耐えてきたものが、ここに来たことで耐える必要がなくなったんじゃないかな。
体も安心したんだよ、やっと耐えなくて済むんだって」
「……そうかも、しれないですね」
シエルは頷くと、「ご馳走様でした」と合掌した。
わたしも食べ終わり、メイドに取りに来てもらった所で、シエルと向き合った。
「…ねぇシエル。こっち来て」
わたしはシエルの手を引き、そっと自分の方へ引き寄せる。
シエルは震え出したけど、わたしに抱きしめられていた。
「ごめんね。
アンスから聞いていたんだけど、今日辛かったんだよね?」
「…何で謝るんです?
同情はされたくないです……」
「色々話聞いてみるべきだったよね」
「…今日お出掛けされていて疲れていたんですよね?
だったらしょうがないですよ」
「…ごめん、怖いかもしれないけど教えて。
ソンジュさんとベレイくんと、何があったの?」
「……全部、あのふたりが言っていたじゃないですか。
映像だって見たでしょう?
僕が、首を絞めたのは事実です。
それ以上…話すことなんてないです」
シエルはそっと、わたしを離した。
そしてゆっくり立ち上がると、腰から頭を下げた。
「ご迷惑をお掛け致しまして、本当に申し訳ありませんでした。
以後、気を付けます」
「シエル…」
「おやすみなさい、エル様」
シエルは踵を返すと、捻挫した左足首を引きずるようにして部屋を出て行った。
「……シエル、わたしはひとりになんてしないよ…」



