心に届く歌








「シエル様、どこが痛いですか?」


「……全部…痛いです…」


「家に帰ったら手当てしましょうか。
ひとまず今は、額だけ手当てしましょう」



止血しているけど、まだ傷口はある。

ドクは黒い鞄の中から包帯と消毒液とガーゼとピンセットを取り出した。



「ちょっと沁みますよ」



ピンセットでガーゼを挟み、消毒液に浸し、椅子で殴られた額に当てる。

シエルは「いっ」と小さく声を出していたけど、ただ震えて耐えていた。



「包帯巻きますけど…額はどうしますか?」


「……前髪、上げたくないです…」


「少しでも駄目ですか?」


「……これぐらいなら」




シエルは自分でそっと、少しだけ前髪を上げる。

額と髪の間にほんの少し隙間が出来ただけだった。




「じゃあ包帯挟みますね」


「ごめんなさい……お願いします…」




ドクは探るようにして、髪と肌の間に包帯を挟み、グルリと頭を一周させ、テープで固定した。




「ご自分で外すようなこと、しないでくださいね。
あとは、…一応ここも包帯だけ巻いておきますね」




ドクが見たのは、シエルの左手首の切り傷。

包帯は外れ傷は見えているものの、血は出ていないようだった。

念のため消毒し、ぐるぐると何周も包帯を巻き、テープで固定した。