雪が降っている日だった。
僕を、両親が施設から引き取ってくれたのは。
笑顔で、僕に「帰ろう」と手を伸ばしてくれる目の前の男女。
「元気でね」と僕を見送る施設の職員。
僕は迷わず伸ばされた手を握り、間に挟まれて寒い中この家に辿り着いた。
初めての場所に戸惑う僕に、あたたかな料理を出してくれた両親。
施設では食べられなかったご飯に、僕は嬉しくて、幸せになれると信じて疑わなかった。
だけど数日後。
コップの水をこぼした僕を、義父は突然殴ってきた。
驚きと痛さで泣くと、義母は僕を蹴ってきた。
『シエル。
お前はまだ小さくてわからないと思うが、これが教育だ』
『シエル。
これが、アタシたちなりのあなたへの愛情よ』
それからは、ずっと暴力の毎日。
だけど、信じていた。
ずっとずっと、信じてきた。
これが教育であり、優しさであり、愛情だと。
形なきものを表す、唯一の表現。
暴力とは、一種の愛情表現だと、信じていた。
全部壊されたのは、あの日。
桜が吹雪く季節だった。



