「シエル」
「っ!」
「床を血で汚したら、どうなるかわかっているわよね?」
「…わかって、ます」
「にしてもあんた、変わっていないわね」
「…そう、ですか?」
「その弱気な所とか、何でも従う所とか。
本当、あんたには意思ってものがないわよね。
あんた、本当に人間なの?」
「……」
「それとも、ただ世間様の邪魔になるゴミ以下のクズ?」
「……」
「よく、あんな国王の娘が引き取るなんて言ったわよね」
「……」
義母の言う通りだ。
本当…可笑しな話だった。
僕にとって世界は…ここ、なのだから。
「シエル」
「っ!」
鼻血をグイッと拭うと、義父を見上げた。
義父は手に、黒くて太い棒を持っていた。
「これ、何だかわかるか?」
「……わかりません…」
「警棒だ。
警察が持つ、護身用の棒だ」
「…え。
何で、そんなものを、持っているんですか」
ひとつ言葉を間違えれば、待っているのは地獄。
僕はゆっくり言葉を選びながら、義父に聞く。
こうやって顔色を、機嫌を伺いながら、僕はいつだって話していた。



