心に届く歌








僕は布団を持ったまま、部屋を出た。

眩しい廊下の蛍光灯の光に目を細めつつ、階段を下りる。

おじさんは舟をこいで眠っていたので、僕はそっと寮の扉を閉め、本家に向かった。

誰にも会うことなく本家の眩しい廊下を通り、目的の部屋を見つけて……我に返った。




一体何をしているのだろうか、僕は。

しかも寝間着姿で、布団を持ったままで。



帰ろうと思ったけど、足が動かない。

見ると情けないほどガタガタ震えていた。

しゃがみ込み、ガタガタ震える足を同じく震える両手で抱きしめていると。





「シエル?」


「っ!」




僕はバッと勢い良く振り向いた。

そこにはお風呂に行って来たのか、顔が火照っているエル様がいた。



「どうしたの?そんなに震えて……」



「触れるね」と前置きし、僕の額に触れる。

ビクッと震えたけど、前髪を上げられることなく、エル様の手は離れた。



「熱ないみたいだね……どうしたの?」


「……エル様…」


「ひとまず部屋の中おいで。立てる?」


「……立てないです…震えちゃって……」


「じゃ腕持って支えるからね」




そっと僕の腕を掴んだエル様は、ゆっくり立たせてくれる。

移動し、ベッドの上に座らせてくれた。

思えばソファーに座ったことは、ドクさんと1対1で話したあの時しかない。




「ソファーで、大丈夫ですよ」


「良いの。
ソファーより布団の方が柔らかいでしょ?

それで……どうしたの?」




隣に座ったエル様が優しく尋ねてくれる。

その優しさが辛くて、僕は涙をこぼした。